【法務コラム】新型コロナワクチン接種・企業対応のポイント
1 新型コロナワクチン接種について
新型コロナウイルス感染症の発症を予防するため、ワクチン接種が徐々に進んできています。
重症化を予防する効果も期待されるようですが、他方で、一定の割合で副反応が出るとも言われており、ワクチン接種を迷う方達もおられると思います。
今回は、ワクチン接種に関して、企業が注意すべきポイントを書きます。
2 ワクチンを接種しないことを理由とした不利益な扱いを行なわない
まず、ワクチンの接種は、接種部位の痛み、筋肉痛や関節痛、発熱、倦怠感、寒気等の副反応が生じるおそれがあります。
そのため、接種を受けるかどうかは、社員ご本人の自由意思に基づいて決定されるべき事項です。
新型コロナウイルス感染症に係る予防接種について、「予防接種法及び検疫法の一部を改正する法律」(令和2年12月9日施行)により、予防接種法の規定が適用されることとなりましたが、接種を受けることは、あくまで努力義務に止まっています。
そこで、企業から、社員に対してワクチン接種を強制することは避けるべきです。
また、ワクチンを接種しない従業員を不利益に扱う(解雇、減給、配置転換等)ことは、ワクチン接種の強制と同じことなので、そのような不利益な扱いは避けるべきことになります。
もちろん、取引先等から、ワクチン接種をした従業員を担当者にして欲しい等の強い希望を受けた場合に、やむなく担当者を変更せざるを得ない場合もあると思いますが、そのような場合でも、賃金減額等の不利益な扱いは原則として避けるべきことになります。
3 ワクチン接種に対応した特別休暇の付与
副反応へのおそれから、ワクチン接種をためらう方も多いと思います。
ワクチンは、1回目の接種だけでなく、抗体ができた2回目の接種時により強い免疫反応が生じ、副反応が強く生じる場合もあるようです。
企業としては、ワクチン接種を強制するのではなく、副反応が生じた場合に安心して休める環境を整備し、従業員に安心してワクチン接種を受けてもらうことが重要になります。
そのためには、年次有給休暇ではなく、別に特別休暇の制度を設けることが考えられます。
特別休暇は、労働基準法で定められている年次有給休暇と異なりますので、企業が有給・無給を自由に決めることが出来ます。
ただ、従業員の安心のためには、有給にした方が良いと思います。
また、副反応の症状・生じる時期は人それぞれのようなので、体調不良がある場合には、接種当日のみでなく、接種翌日等も、特別休暇を認めることが考えられます。
なお、虚偽の申告の予防のため、特別休暇の申請の際には、ワクチン接種済証の確認をさせてもらうことが考えられます。
ただし、ワクチン接種の情報は、健康に関する要配慮個人情報に該当する可能性がありますので、管理に注意が必要です。 コロナ禍で不安が尽きない状況が続いていますが、企業としては、従業員が安心して業務を継続できるよう、環境を整備することが重要になります。
以上
(弁護士 浅倉稔雅)
※この記事の内容は当事務所のメールマガジン2021年8月号で配信した内容と同一です。
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