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■ 【法務コラム】同族会社の注意点
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皆様いかがお過ごしでしょうか。
少し肌寒くなってきてますので,お体にはお気をつけて下さい。
今回の法務コラムでは同族会社の注意点についてご説明します。
1 同族会社とは
同族会社という用語が会社法や商法で規定されているわけではありません。
そのため,同族会社という概念が商法上定まっているわけではなく,家族間で経営している中小企業という程度にお考えください。
もっとも,法人税法では同族会社という言葉がでてきますが,今回の法務コラムはあくまでも商法上の同族会社の注意点に絞らせていただきます。
2 制度設計
同族会社は家族間で経営し,株式も保有することがほとんどです。そのため,株式が家族以外の者に譲渡されてしまうことを防ぐ必要があります。
そこで,会社を設立する際に,株式の譲渡制限を定款に記載し,登記をすることで,株式会社を非公開会社とする必要があります。
この譲渡制限を設けることで,家族とは関係のない第三者に株式が渡ることを阻止することができます。
この譲渡制限を設けていない会社が時折見受けられます。
この場合でも,会社法上の手続きに従って,定款を変更すれば,譲渡制限を設けることは可能です。
3 各種書類の作成・保存
同族会社だと,各議事録や株主名簿の作成を怠りがちです。
確かに経営方針等については食事等をしながら話すこともあると思います。
その話し合いを行うたびに,取締役会を行ったとして議事録を作成することは面倒かもしれません。
そのような議事録を作成しなくとも基本的には問題がないように思えます。
しかし,家族の仲が悪くなり,対立が生じた場合に,「あのとき,こう決めた。」「そんなことは決めてない。」等と揉めてしまう場合があります。
そのようなときに議事録があると,どのようなことを決定したのかがわかり,有力な証拠となります。
そのため,会社法や商法で作成するよう求められている議事録等の書類については,できるだけ作成なさった方が何かあったときに助かります。
4 相続には要注意
お持ちになっている株式を子供に平等に分配し,協力して会社を支えてほしいと思うことがあるかもしれません。
しかし,株式はできるだけ分散させない方が良いと思われます。
というのも,兄弟仲が良いように見えても相続によって揉めることも十分にありえます。
また,当初は良くても何らかの原因で兄弟間に対立が生じてしまうこともあります。
このように対立が生じた場合に,株式が分散されていると,会社の経営権を巡って争いが生じてしまうおそれがあります。
同族会社のコンプライアンスや,相続をどのようにすべきかお困りの方は一度ご相談いただければと思います。
紛争が生じる前に予防することは十分可能です。
(弁護士 太田響)
※このコラムは2018年9月にメールマガジンで配信した内容と同一です。
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