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■ 【法務コラム】内容証明郵便の使い所
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事件のご依頼をいただいて、さあまずは相手方に(普通郵便等で)通知しようと準備していると、ときどき依頼者の方から「内容証明郵便で送らないのですか」と残念がられることがあります。
世間一般では「弁護士といえば内容証明郵便」というイメージを抱かれているようですし、確かに、ご本人から請求してもなかなか応じてもらえない場合でも、弁護士から内容証明郵便が届くと受け取った方が事実上の心理的影響を受け、素直に請求に応じてくれるという例もあります。
そのような効果を期待して内容証明郵便を利用することもありますが、実は、内容証明郵便を利用する法的な意義は全く別のところにあります。
内容証明郵便とは、郵便事業者に郵送した文書の内容を証明してもらえる、つまり、「間違いなく●●という内容の文書を送りました」ということを証明してもらえるという制度です。
普通郵便の場合、例えば後日裁判となって郵送物の写しを証拠として提出したとしても、相手方から「このような内容の文書は受け取っていない」と反論されると、本当にその内容の文書を送ったのか裁判所が確信を持てないという事態になりかねません。
そこで、このような反論をさせないようにするために、内容証明郵便を利用するわけです。
内容証明郵便を利用する場合は、通常は配達証明(郵送物が間違いなく届いたことを郵便事業者に証明してもらうこと)を付して送付しますので、 これら1セットで「●●という内容の文書が●月●日に間違いなく相手方に届いたこと」を証明できます。
そのため、弁護士としてまず第一に内容証明郵便の利用を考えるのは、相手方に対して確実に意思表示の内容を伝えることが法律上要求されている事案のご依頼を受けたときです。
典型的には、時効中断の前提として行う催告(民法153条)や相殺の意思表示(民法506条1項)、契約の解除(民法540条)などがあります。
他方で、以上のような必要性がなく話合いで穏便な解決を目指す場合に、むやみに内容証明郵便を利用すれば、かえって当事者間の関係がこじれ、紛争の解決が難しくなってしまう可能性があります。
ただでさえ、世間では「弁護士=怖い」という印象を持たれているようであり、私も、いかに淡々とソフトに文章を書いても、後に相手方から「弁護士から怖い内容の請求書が届いた」などと言われることがあります。
そんなときは、「私はこんなに優しい人間なのに」と心の中で嘆くわけですが(笑)、 今後もそのように見られているということを自覚しながら、依頼者の方とご相談して、内容証明郵便を適時適切に利用していきたいものです。
(弁護士 武田賢治)
※この記事はメールマガジン2017年11月号で配信した記事と同一の内容です。
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