第15回 出資金からの債権回収・税金との優劣
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第15回 出資金からの債権回収・税金との優劣
当JAは、組合員Xさんに対し、Xさんの自宅に抵当権を設定して2,000蔓延を融資しており、貸金残高は1,500万円です。Xさんは、平成26年頃から病気がちになり、平成26年から当JAへの貸金の返済に延滞が生じていました。そして、破産申立も検討しているとの情報もあり、当JAは抵当権によるXさんの自宅の競売申立を検討しはじめていました。
そうしたところ、Xさんは、平成26年以降の市民税・固定資産税を滞納していたため、市から自宅と当JAの出資金(1口2,000円・150口)に滞納処分による差押えが行われました。
Xさんの自宅は、立地の悪い所にあり、不動産価格が下落していて、競売を申立てをした場合の売却価格は1,000万円程度の見込みのため、当JAは抵当権で回収できない部分の回収に悩んでいたところでした。
そこに滞納処分の差押えが行われ、税金は一般の債権より強いと聞いていましたので、自宅の競売代金から税金が優先的に取られてしまうのか、出資金から当JAの債権の回収は行えないのか悩んでいます。
<解説>
1、税金と抵当権の優劣
融資課長
税金は一般の債権より強いということを聞いているのですが、Xさんの市民税・固定資産税は、当JAの貸金債権より優先されるのでしょうか?
弁護士
税金は、公益性があるため、確かに一般の債権より強いということになります。債権者である国や地方公共団体は、自ら滞納処分により強制的実現を図れますし、滞納者の財産を調査するため質問・検査・捜索する権限も認められています(国税徴収法八条)。
融資課長
すると、自宅の競売の申立てをしても、市民税・固定資産税に優先的に配当されてしまうのでしょうか?
弁護士
いえ、JAは自宅に抵当権を設定していますので、税金に優先されるとは限りません。抵当権を設定している財産についての配当の際は、抵当権設定登記の日と税金の法定納期限の先後により優劣が決まり、先の方が優先されることになります(国税徴収法一六条)。
融資課長
本件の場合どうなるのでしょう。
弁護士
抵当権の設定登記もきちんと行っていますよね?
融資課長
もちろん、設定と同時に行っています。
弁護士
そうであれば、抵当権設定登記が平成二二年一二月で、税金は平成二六年以降のものですから、JAの貸金債権の方が優先されます。
融資課長
それを聞いて安心しました。
2、出資金についての税金とJAの貸金債権の優劣
融資課長
ところで、出資金も市からの滞納処分で差し押さえられたのですが、今後どうなるのでしょうか?
弁護士
出資金、正確にいえば持分の差押えを行った債権者は、差押債権者として、または、民法四二三条に規定されている債権者代位権により債務者である組合員に代位して、JAからの脱退の手続き(JAに対する持分譲受請求権の講師、農協法二〇条一)を行い、…
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