第14回 共済金からの債権回収の注意点
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第14回 共済金からの債権回収の注意点
当JAは、組合員Xさんの自宅に抵当権を設定し、友人Aさんを連帯保証人として1,000万円を融資していました。現在、貸金残高は600万円であり、昨年から延滞していました。
自宅には、B銀行が先順位で1,000万円の抵当権を設定していましたが、融資当時、自宅は時価2,000万円を下らず、また、Xさんが死亡共済金1,000万円・受取人妻Yさんの養老生命共済契約を当JAと締結していたので、回収に支障はないと考えていました。ただ、最近は、不動産価格が下落するとともに、Aさんは高齢でその他に財産がないため、債権回収に不安を感じていました。
本年1月には、Xさんの共済金についてCカード会社から差押えがあり、C社から当JAに「共済を解約するかもしれない」との連絡があったのですが、Xさんが病気がちだったため、慌てて家族がC社に支払いを行って、差押えは取り下げられました。
ところが、その2ヵ月後にXさんは亡くなりました。Xさんの相続人は妻Yさんと子Zさんの2人であり、相続放棄を検討しているようです。
受取人Yさんの死亡共済金1,000万円があるので、当JAの貸金はそこから回収できると思っているのですが、本当に回収できるか不安を感じて悩んでいます。
<解説>
1、共済契約の差押えと解約
融資課長
共済契約を他から差し押さえられたのは初めてだったので少し慌てたのですが、共済や保険を差し押さえて債権回収することは可能なのでしょうか?
弁護士
共済金請求権や保険金請求権は債権ですので、債務者がその様な請求権を有していれば、債権者は、それを差し押さえてJAや保険会社から直接取り立て、債権回収に充てることが可能となります。
融資課長
C社が共済を解約しようとしたのはなぜなのでしょうか?
弁護士
差し押さえた債権者のC社は、債務者であるXさんの共済金請求権が具体化していればそれを取り立てることが可能です。しかし、具体化はしていなかったため、解約して解約返戻金請求権として具体化し、それを取り立てようとしたのでしょう。
融資課長
でも、C社は共済契約者でもないのに共済を解約できるのでしょうか?
弁護士
C社は、差押債権者として、また債権者代位権によりXさんに代位して、解約することができるのです。
融資課長
債権者代位権とはどのような権利なのでしょうか?
弁護士
民法四二三条で認められた件で、債権者は、自己の債権を保全するために、債務者に属する権利を行使できるというものです。
融資課長
C社に共済契約を解約されていたら、当JAはC社に解約返戻金を支払わなければならなかったのでしょうか?
弁護士
JAは、Xさんに貸金債権を有していますので、相殺することにより解約返戻金をJAの債権回収に充てることができます。したがってC社に支払う必要はありませんでした。
2、JAによる解約や共済契約の失効
融資課長
すると、JAと共済契約を締結している組合員がJAへの債務の支払いを延滞しているような場合は、JAが債権者代位権により組合員に代位して共済契約を解約し、解約返戻金と相殺して回収を…
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