第11回 保証・抵当権・仮差押えとは何か
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第11回 保証・抵当権・仮差押えとは何か
当JAは、平成22年4月、Aさんに対して2,000万円の融資をしました。その際、Aさんの父Bさんに保証人になってもらい、Aさんの兄Cさんの農地に抵当権を設定しました。当時は、Cさんの農地は十分な担保価値があり、Cさんが「万が一のときは保証する」と口頭で言っていたので、Aさんに融資をしました。
ところが、Aさんが病気で倒れ、財産もなく返済不能となってしまい、店頭建を設定しているCさんの農地も農地価格の値下がりで担保不足となってしまっています。
融資課内では、保証人Bさんの自宅を競売にかけることを検討していました。しかし、先日、Cさんが「農地を競売で失うことになるから農業は辞める。Bの自宅を売却して資金を捻出し、Bと飲食店を始める」と言っているという情報を当課の職員Hが聞いてきました。
融資課内では、急いでBさんの自宅を差し押さえ、また、Cさんの他の財産への差押えもできないかという話が出ているのですが、どのように対応したらよいのか、悩んでいます。
1、保証人と抵当権を設定する理由
融資課長
抵当権を設定した農地の値下がりで担保不足が予想されるため、どうすれば保証人の財産などから債権回収できるのか悩んでいます。
弁護士
保証人も抵当権も確保していたのに残念でしたね。ところで、Hさん、JAが融資する際に保証人や抵当権の設定をお願いすることが多いのはなぜでしょうか。
融資課職員H
債権回収が確実になるからだと思いますが…。
弁護士
そのとおりです。債権を有している場合、判決などの債務名義を取得すれば、債務者の財産を差し押さえて強制執行ができます。しかし、債務者に財産がなければ差押えのしようがなく、債権回収は困難になります。保証人の設定は請求できる債務者を増やして回収の可能性を高めようとするものであり、抵当権などの担保の設定は、特定の財産から、他の債権者より優先的に弁済を受けられるようにしてより回収を確実にしようとするものです。
続いて、「保証人」と「抵当権」について説明しましょう。
2、保証人とは何か
弁護士
保証人は、融資を受けた本人が履行しないときに履行する責任を負う(保証債務を負う)債務者であり(民法四四六条一項)、保証債務は債権者と保証人の保証契約により生じます。
保証人が保証する債務のことを「主債務」といい、主債務の債務者のことを「主債務者」といいます。保証人は、主債務者に代わって債務を履行した場合、その金額を主債務者に対して請求できることとなり、これを「求償権」といいます(同法四五九~四六四条)。
主債務者から履行を受けられない場合でも、保証人がいれば同人から履行を受けて債権回収できることになります。そこで、債権回収の事前の対策として、保証人が広く利用されているわけです。
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