第7回 保証人から弁済を受けるときの代位の注意点
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第7回 保証人から弁済を受けるときの代位の注意点
当JAでは、畜産農家Xに対し、つぎのような内容の融資をしました。
1.平成20年12月18日、 Xの畜舎の土地建物に抵当権を設定し、 Aを連帯保証人として1,000万円を融資。
2.平成24年1月31日、 Xの自宅の土地建物に抵当権を設定し、 Bを連帯保証人として700万円を融資。
ところが、平成26年7月、 Xは病気で倒れて畜産経営を続けることが困難になり、同年の年末に畜産経営をやめました。
平成26年12月末での当JAのXへの債権は、つぎのとおりです。
①平成20年12月18日付け貸金の残金300万円
②平成24年1月31日付け貸金の残金500万円
③餌代金の残金500万円
回収について検討した結果、①は、畜舎の売却には時間がかかりそうだったので、 Aにお願いして弁済してもらいました。その後、 Xの求めに応じて畜舎の抵当権を抹消したところ、 Xは、畜舎を売却して病気の治療費や生活費にあてたようです。③は、保証人もなく回収に悩んでいたのですが、自宅をXの親戚が500万円で買うとの話が出てきたので、その代金をあてて、②は、 JAに多額の貯金を有するBに弁済してもらって回収するという案を検討中です。
ところが、最近になり、 Aから「」Aが畜舎の抵当権を抹消したために損害を被った。 JAに損害賠償請求する予定である」との話がありました。現在考えている回収案についても問題があるのではないかと悩んでいます。
<解説>
弁済による代位とは何か
弁護士
畜舎の抵当権を抹消してしまったのはまずかったですね。
相談者
えっ!保証人からとはいえ、JAの債権は弁済してもらって消滅したのですから、抹消するのは当然なのではないのですか?
弁護士
主債務者であるXが弁済したのであれば問題はないのですが、保証人Aが弁済した場合は、 Aは、本来弁済すべきだった主債務者Xに対し、弁済した金額の償還を求める権利、すなわち求償権を取得します(民法四五九条)。また、保証人だけではなく主債務者以外の者が弁済した場合、民法上の条文は様々ですが(物上保証人が弁済すれば同法三五一条・三七二条、保証人・物上保証人以外の者が主債務者から委託を受けて弁済すれば同法六五0条主債務者から委託を受けず弁済すれば同法七〇二条)、弁済者は求償権を取得することになります。
この求償権の保護のため、弁済者は求償権の範囲内で債権者に代位して債権の効力および担保として債権者が有していた一切の権利を行使できるという制度(弁済による代位)が設けられているのです(同法四九九~五〇一条)。
相談者
なるほど。ところで、弁済が債権の一部の金額だった場合はどうなるのでしょうか?
弁護士
そのような場合は、その価額に応じて債権者とともに代位した権利を行使することになります(同法五〇二条)。
相談者
わかりました。
2.代位で移転した権利への注意
弁護士
代位で行使できる権利のなかで求償権の保護に効果があるため重要なのは、判決等の債務名義や抵当権等の担保です。なお、根抵当権は、確定前は代位の対象となりませんが(民法三九八条の七第一項)、確定後は代位の対象となります。
今回の事案でいえば、畜舎の抵当権は、代位でJAからAに移転していたのです。ところが、JAがその抵当権を抹消して畜舎が他…
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