第6回 根保証の注意点
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第6回根保証の注意点
当JAでは、畜産農家Xに対し、極度額500万円の売買取引約定書を締結して餌を供給するとともに、経営資金の融資を行っていました。
平成22年11月12日、 Xが高齢になってきたので保証人を付しておいた方が安心と考え、 ABCにつぎの内容で連帯保証人になってもらいました。なお、 Cは平成27年4月4日に死亡しており、相続人はDのみです。
A B ▶ 融資取引について極度額1,000万円の範囲で連帯保証する。確定期日はXが70才になる平成28年12月24日とする。
C ▶ 餌の売買取引について連帯保証する。期間は特に定めない。
その後、 Xが病気で倒れて畜産経営が困難になり、保証人にも請求せざるを得ない状況になったため、関係書類をチエツクしたところ、 Bとの保証契約書の極度額が空欄のままであることが判明しました。担当者に確認すると、「極度額の金額を口頭では説明したが記入するのを忘れていた」とのことでした。
平成27年12月1日現在のXに対する債権の残高は、つぎのとおりです。
・平成23年6月21日付け貸金の残金300万円
・平成26年2月24日付け貸金の残金200万円
・餌代金600万円(Cの死亡前の分は400万円)
これらを保証人に請求できるのかどうか、悩んでいます。
<解説>
極度額と主債務者
弁護士
餌代金が極度額を超えてしまっていますね。極度額を超えないように注意してくださいね。
相談者
管理が行き届かず、畜産部門でXの注文に応じていたら超えてしまっていたようです。今後は注意します。極度額を超えてしまった部分も、 Xには請求できますよね?
弁護士
継続的取引の極度額は、主債務者との関係では与信の枠であり、 それを超えての融資や売渡しには応じられないという意味があります。しかし、主債務者からの求めに応じるなどで、融資や売渡しを続けて金額が極度額を超えてしまった場合、超えた部分を主債務者に請求できなくなるということはありません。
相談者
それを聞いて安心しました。
弁護士
とは言っても、その主債務者に対する極度額は、主債務者の財産や経営の状態等を検討した結果の与信の枠なのでしょうから、不良債権を発生させないためには、債権が極度額を超えないように注意して管理することが大切です。
2.根保証の保証人の保護の必要
弁護士
ところで、 ABCには、特定の債務の保証ではなく、一定の範囲に属する不特定の債務を継続的に保証してもらっていますね。このような保証を「根保証」といいますが、極度額が定められている場合は、保証人に請求できる金額は極度額が上限となります。
相談者
極度額を定めていなければ、上限なくいくらでも請求できるのですか?
弁護士
形式的に考えるとそうなりますが、それでは保証人が予想もしなかった過大な金額を負担する場合が生じてしまいます。また、期間の定めがない根保証ですと、保証人が予期しなかったほど長期にわたる保証期間になる場合もあります。それでは保証人に酷だということで、判例や立法により、根保証の保証人の保護が図られてきています。
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