第4回 極度額、仮差押、相殺等の注意点
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第4回 極度額超過、仮差押え、相殺等の注意点
当JAでは、畜産農家Aの自宅の土地建物に対し、平成18年1月10日、つぎのような内容で極度額500万円の根抵当権を設定しました。
*債務者・・・・・ A
*被担保債権の範囲・・・・・「消費貸借取引」、「売買取引」
その際、400万円の融資を、平成23年10月には200万円の融資を行いました。
Aの自宅は時価800万円程度で、他に時価500万円程度の畜舎の土地建物を所有
しています。
Aは、高齢で後継者もいないことから昨年経営を辞め、自宅と畜舎を売却して遠方に住む娘との同居を考えているようですが、JAの2口の貸金債務(残高合計400万円)と餌代金の残金300万円を負っています。親戚やクレジット会社にも相当額の借金があるようで、JAへの返済も滞ってしまっています。
JAにある50万円の定期貯金について、貸金との相殺を依頼したところ、「引越費用に使う予定」と断られてしまいました。その際、「自宅と畜舎をBに売却し、その代金をJAへの返済にあてようと思っているが、根抵当権がついているとBが不安がって買ってくれない。代金は必ずJAへの返済にあてるとの念書を書くので、急いで根抵当権を抹消してほしい」と頼まれました。
Aを信用して念書と引換えに根抵当権を抹消するかどうか、Aからの債権回収をどのようにして行ったらよいか悩んでいます。
<まずは○×問題にチャレンジ!>
--あなたはどう考える?その理由は?--
1.本事例について、畜舎の売却代金から確実に回収するためには、畜舎の仮差押えを行うのが効果的である。
2.本事例について、自宅がBに売却された後も競売申立はできるので、自宅についての仮差押えの必要はない。
3.本事例について、定期貯金の相殺にはAの承諾が必要なので、承諾が得られるように粘り強く交渉することが大切である。
4.本事例について、Aの頼みに応じて念書と引換えに根抵当権を抹消するのも、早期債権回収のためやむを得ない。
5.本事例について、JAはAの自宅に根抵当権を設定しているので、Aへの貸金債権について消滅時効の心配はない。
根抵当権の極度額に注意
弁護士
JAの債権額が根抵当権の極度額を超えてしまっていますね。どのようにして回収しようと考えているのですか?
相談者
自宅にはJA以外には誰も担保を設定していないので、極度額を超えても配当かあると思っていたのですが・・・。
弁護士
普通の抵当権の場合は、後順位抵当権者がいれば利息損害金は最後の二年分に制限され(民法三七五条)、それを超える利息損害金は優先的な配当を受けられませんが、後順位抵当権者がいなければ、何年分でも配当を受けられます。
根抵当権の場合は、利息損害金についての制限はありませんが配当は、元金利息損害金含めて極度額の限度でしか受けられません。不動産が競売にょり極度額を超えて高く売れ、他に配当を受けられる債権者がいない場合でも、根抵当権者には配当されません。
その金額は剰余金として債務者に交付されてしまいますよ。
融資部門と購買部門で債権残高について情報を共有し、根抵当権の被担保債権が極度額を超えないようにすることが大切です。
2.仮差押えの効用
相談者
わかりました。今後注意します。今回はどぅすればよいのでしようか?
弁護士
極度額の増額と畜舎への追加担保に応じてもらえればよいのですが、今のAの状況やJAへの対応からして難しいでしょう。そうなると、裁判を起こして判決を取得し、自宅と畜舎にその判決による強制執行として競売申立をするしかないでしょう。
ただ、 Bに売却されてしまってはそれもできなくなってしまうので、自宅も畜舎もまとめて仮差押えを行うのがよいでしょう。
相談者
仮差押え、ですか。
弁護士
担保を設定していない債務者の財産に強制執行を行って債回収するためには判決等の務名襲が必要ですが(民事塾行法一三条)、偵務名義を取得するまではある程
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