第3回 根抵当権の確定における注意点
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第3回 根抵当権の「確定」における注意点
当JAでは、養豚農家Aに平成10年頃から経営資金の融資や、餌の販売をしてきました。平成20年1月10日にA所有の自宅と農地を共同担保として、つぎのような内容で極度額1,000万円の根抵当権を設定しています。
*債権者・・・A、Aの長男B
*被担保債権の範囲・・・「消費貸借取引」,「売買取引」
当J Aは、平成22年4月20日にAに対し500万円の融資を行い、平成27年9月現在の残高は300万円になっています。
Aは、友人Cが消費者金融D社から借り入れた100万円の保証人になっていたため、平成27年3月にD社から自宅を差し押えられました。 J Aは、同年4月に裁判所からの債権届出の催告書で差押えを知りましたが、 AがJAへの支払いを怠っていなかったため、餌の販売を続けていました。ところが、同年6月から貸金の返済が滞り、餌代金も6月以降の200万円が未収となっています。
最近、 AからD社への支払資金100万円の融資依頼を受けたのですが、「融資を行い、差押え解消に協力する」という穏便案と、「融資を断り、」Aも競売申立し、滞納が解消されたら取り下げる」という強硬案があり、判断に迷っています。
<解説>
「確定」に要注意
相談者
「組合員であるAを助けるために融資しよう」という穏便案と、「JAに滞納し出したAへの融資はりスクが高い。競売申立してJAへの滞納を解消したら取り下げて融資するのが安全だ」という強硬案があり、どちらにしようか悩んでいます。
弁護士
餌代金200万円の未収金については特に心配していないのですか?
相談者
「売買取引」に該当して担保されているし、極度額まで余力もあるので、心配していませんが・・・
弁護士
根抵当権には、①極度額を超えた債権は担保されない、②被担保債権の範囲に含まれない債権は担保されない、③確定後に発生した債権は担保されない、という三つの限界がありましたね(本誌五三
五号二九頁同連載第二回)。
餌代金は極度額と被担保債権の範囲はクリアしていますが、確定後に発生した債権なので、担保
されません。 JAが消費者金融の差押えを知ってから二週問で根抵当権は「確定」しています(民法
三九八条の二0第一項三号)。餌代金200万円はその後に発生したものですから、根抵当権で担保
されない無担保の債権になってしまっていますよ。
相談者
えっ、それは困ります。不良債権化させないために何かよい対策はないでしょうか?
2.「確定する」とは
弁護士
Aへの融資の件もこの無担保の未収金の件も解決するためのりスケの少ない、よい対策があるのでお教えしましょう。ただし、それを説明する前に、今後のために確定」の基本を押さえておかなければなりません。そもそも根抵当権が「確定する」とはどういうことでしたか?
相談者
よい対策があると聞いて安心しました。根抵当権が「確定する」とは、根抵当権によって担保される被担保債権の元本は、一定の確定事由が生じると「確定」し、「確定」後
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