相談者
継続的な取引を行っている組合員とは、広く担保される根抵当権が便利なので、根抵当権を設定した上で取引を行っています。しかし、担保漏れがないか検討しだしたら、不安が生じてしまいました。
弁護士
普通の抵当権ではなく、根抵当権にしているのはなぜですか?
相談者
抵当権は一定の範囲に属する不特定の債権を極度額の限度で担保する抵当権なので、一度設定すれば被担保債権の範囲に含まれる債権は極度額の限度ですべて担保されることになり、債権回収には便利だからです。
弁護士
そのとおりです。ですから、債権回収のための事前の対策として根抵当権が広く利用されているのですが、①極度額を超えた債権は担保されない、②被担保債権の範囲に含まれない債権は担保されない、③確定後に発生した債権は担保されない、という三つの限界があることには注意しなければなりません。
2.被担保債権の範囲の定め方
相談者
なるほど。しかし、注意してきているつもりでも、今回は被担保債権の範囲に含まれるかどうかについて不安が生じてしまったのです。その組合員に対してJAが有するすべの債権を担保するような根抵当権は設定できないのでしょうか?
弁護士
残念ながら債権者債務者間に発生するすべての債権を担保する包括的な根抵当権は認められていませんので、一定の範囲を定めて被担保債権の範囲を登記しなければなりません。債権の範囲の定め方としては、「特定の継続的取引契約」、「一定の種類の取引」、「手形・小切手債権」などがあります。いくら根抵当権を有していても、回収しようと思う債権が登記された根抵当権の被担保債権の範囲に含まれていなければ担保されないことになるので注意が必要です。代表的な定め方の「特定の継続的取引契約」「一定の種類の取引」について説明しましょう。