L.01 事業用建物賃貸借でも通常損耗の補修費用は賃借人に請求できなくなったのか?
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今回の改正では、敷金から室内の損傷補修費用をどれだけ差し引けるをめぐって揉めることの多かった建物賃借人の原状回復義務について、判例や国交省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を踏襲し、賃借人に責任の無い損傷や通常使用による損傷は、賃借人の原状回復義務の範囲外であることが明文化されました。
つまり、そのような損傷の補修費用は敷金から差し引けないことが条文に明記されたわけであり、そのような費用を差し引いたりすると、賃借人から敷金の全額の返還を求める請求を受けることになりますので注意しましょう。
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と、9月9日のセミナーで話したところ、終了後に「ガイドラインは事業用建物には適用されず、事業用建物の場合は補修費用を差し引いてきていたのですが、今回の改正ではそれが認められなくなるのでしょうか?」との質問を受けました。
全然考えていなかったことなので、回答を保留しましたが、民法改正作業の幹事を担当した知り合いの弁護士に確認したところ次のとおりでした。勉強になりました!
・改正民法の条文は、契約により変更可能な任意規定だが、賃借人が消費者の場合は、同条文に反する契約条項は消費者契約法§10で無効になり、敷金から賃借人に責任の無い損傷等の費用は差し引けない。
・事業用建物の賃貸借の場合は、契約により変更可能で敷金から通常損耗等の原状回復費用を差し引くことが可能だが、最高裁平成17年12月16日の判例により、賃借人が補修費用を負担する範囲が契約書等に明記されていることが必要である。
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